数ヶ月ぶりに冷蔵庫を動かしてその下のホコリを掃除しようとしたとき、カサカサとした乾いた音とともに現れたのは小豆のような形をした茶褐色の物体でありよく見るとそれは片側がパカりと割れて中身が空っぽになったゴキブリの卵鞘でした。その瞬間これまでの平穏な暮らしが崩れ去るような衝撃を受け、この殻から生まれた数十匹の小さな黒い影が夜な夜な自分のキッチンを徘徊していたのだという想像が頭を支配しましたが、立ち止まっていても解決はしないと考え私はその日を家中のゴキブリ掃討作戦の開始日と定め徹底的な清掃と点検を実行に移しました。まず冷蔵庫の裏側の放熱板付近やコンプレッサーの熱がこもる場所には、卵鞘の抜け殻だけでなく黒い砂粒のようなゴキブリの糞が散乱しており、そこが彼らにとっての拠点となっていたことは明白であったため、掃除機でホコリとともにすべての証拠を吸い取りその後はアルコール除菌剤で徹底的に拭き掃除を行いました。空の卵が一つあるということは一回につき平均して三十匹程度の幼虫が孵化している計算になるため、私はキッチンのすべての引き出しの中身を取り出し隠れた隙間がないか、また他にもまだ孵化していない卵鞘が隠されていないかを血眼になって探しました。するとシンク下のベニヤ板の継ぎ目や、調味料ラックの底、さらには常温保存していた段ボールの折り返し部分など、人間の目からは死角になる場所にいくつかの潜伏の形跡を見つけましたが、幸いにも孵化前の卵は見当たりませんでしたが、すでに放たれた幼虫たちがどこに隠れているか分からないため、私は家中の隅々に毒餌剤を配置し彼らが成虫になる前に飢え死にするか毒を食べるように仕向けました。この徹底清掃を通じて学んだのはゴキブリは決して清潔な場所には寄り付かないということではなく、いかに人間の視線が届かない死角を管理するかが勝負であるということで、空っぽの卵鞘という不快な落とし物は、私の掃除が甘かった場所を的確に教えてくれる厳しい教師のような存在でもありました。数日間は夜中に電気をつけるのが怖くてたまりませんでしたが、清掃から一週間が経過し毒餌剤の周りで数匹の小さな幼虫の死骸を見つけるにつれ、着実に自分の家を取り戻しているという実感が湧いてきました。空の卵を見つけたことは決して不運なことではなく、手遅れになる前に繁殖の事実に気づけた幸運な出来事だったのだと自分に言い聞かせ、今では月に一度は必ず大型家電を動かしてチェックするという鋼の掃除習慣が身についています。
冷蔵庫の下で見つけた空の卵から始まる徹底清掃の記録