冷たい土の感覚が腹部に伝わり私の繊細な触角は地中のわずかな震えを捉えようと全神経を集中させておりそこには人間に知られることのない深淵なる暗闇と命の鼓動が渦巻いています。私は空を飛ぶ自由を愛していますがそれ以上に土の中に潜むあの白い獲物の気配を追い求める本能に突き動かされており私の存在理由はただ一つその獲物を探し出し次世代の糧とすることに他なりません。人間たちは私の姿を見て恐れおののき時には鋭い殺意を持って追い払おうとしますが私にとって彼らはあまりに巨大で鈍重な動く壁に過ぎず彼らに危害を加えるなどという無駄なエネルギーを使うつもりは毛頭ありません。私の目的はただひたすらに土の奥深く豊かな栄養を蓄えたコガネムシの幼虫を見つけ出すことでありそのために私はこの黒い鎧を纏い力強い顎と土を掻き分ける脚を手に入れたのです。地中の気配が強まると私は確信を持って穴を掘り始め周囲の光が遮断された暗黒の世界へと潜っていきますがそこは私だけの特別な狩場であり獲物が発する微かな熱と振動が私の進むべき道を導いてくれます。ついに獲物の柔らかい体に触れた瞬間私は一瞬の隙も与えず毒針を打ち込みその暴れる体を静かな眠りへと誘いますがこれは決して残酷な行為ではなく数千年も前から繰り返されてきた命の継承の儀式なのです。私の卵がその暖かい体の上で目覚め親である私の姿を見ることもなく地中の恵みを糧にして成長していく様子を想像しながら私は再び地上へと這い上がり次なる使命を果たすために青い空へと飛び立ちます。人間たちの庭は私にとって広大な狩場であり彼らが大切に守る芝生の根を守るために私がどれほどの功績を上げているかを彼らは知る由もありませんが私は感謝されることを望んでいるわけではなくただこの大地に刻まれた掟に従って生きているだけです。風に乗って草の香りを嗅ぎ土の湿り気を感じながら私は今日という日を全力で駆け抜け地中の奥深くに私の生きた証を刻み込み続けます。明日もまた太陽が昇れば私は羽を震わせ地上の喧騒をよそに静かなるハンティングを再開するでしょう。