今思い出しても背筋が凍るような経験をしたのは、去年の九月、実家の裏山の草刈りをしていた時のことでした。例年通り、エンジン式の草刈り機を回しながら背丈ほどに伸びた雑草を刈り進めていた私は、周囲の音も聞こえない状態で作業に没頭していましたが、ある地点に差し掛かった瞬間、足元から黒い霧のようなものが湧き上がってきたように見えました。それが何であるかを理解するよりも早く、手首や首筋に焼けるような激痛が走り、私はパニックになって草刈り機を放り出し、一目散に山を駆け下りました。後を追ってくる羽音は耳元で鳴り止まず、服の上からも次々と刺される感覚があり、死の恐怖を本気で感じた数分間でした。家になだれ込み、防虫スプレーを全身に浴びてようやく落ち着きましたが、鏡を見ると顔や腕は無惨に腫れ上がり、意識も朦朧としてきたため、すぐに家族に救急病院へ運んでもらいました。医師からは「クロスズメバチ、いわゆる地蜂の巣を踏んだんだろう」と言われ、幸いにもアナフィラキシー症状は軽微で済みましたが、もし心臓の弱い高齢者や子供だったら命に関わっていたかもしれないと言われ、自分の無知さを痛感しました。後日、専門の業者に現場を調査してもらったところ、私が草を刈っていた地面のすぐ下に、直径三十センチメートルもの巨大な地蜂の巣が作られていたことが判明しました。草刈り機の振動が地中の巣にダイレクトに伝わり、蜂たちを一斉に激昂させてしまったのが原因でした。業者の人が巣を掘り起こすのを見学させてもらいましたが、何層にも重なった芸術的な構造の巣の中に、数え切れないほどの白い幼虫と成虫がうごめいている光景は、今でもトラウマとして残っています。この事件以来、私は野外作業をする前には必ず長い棒で地面を軽く叩きながら、蜂の出入りがないか念入りに点検するようになりましたし、服装も常に白一色で固めています。地蜂の巣は、私たちが当たり前だと思っている足元の平穏を、一瞬で地獄に変える力を持っています。自然は美しいだけではなく、このように隠れた牙を持っているということを、身をもって知った夏の終わりでした。これから山や庭で作業をする方には、自分の足元にあるかもしれない見えない巣への警戒を、私のような失敗をする前に徹底してほしいと心から願っています。
草刈り中に遭遇した地蜂の巣の恐ろしい体験