害虫駆除の専門家として長年、新築住宅のトラブル解決にあたってきた田中氏に、なぜ新築でもゴキブリが出てしまうのか、その真実を伺いました。「新築だから大丈夫という過信こそが最大の敵です」と田中氏は警鐘を鳴らします。彼によれば、新築住宅には特有の「誘引物質」があると言います。それは建材に使われる接着剤や合板から出る独特の匂い、そして真新しいコンクリートが乾燥する過程で発する湿気です。これらはゴキブリにとって不快なものではなく、むしろ新しい生息地を見つけるための目印になることがあるのです。「さらに深刻なのは、周辺環境の変化です。新築が建つということは、それまで空き地だった場所や古い建物があった場所が掘り返され、土の中にいた昆虫や周辺の古い家屋にいたゴキブリが追い出され、最も近くて暖かい新居を目指して移動してくるのです」と語ります。田中氏が現場でよく目にするのは、引っ越しの段ボールに付着した卵のケースです。旧居の暗い場所に置いていた段ボールをそのまま新居のクローゼットにしまう行為は、時限爆弾をセットするようなものだと言います。「新居に一匹も入れたくないのであれば、まずは旧居で荷造りをする段階から戦いは始まっています。すべての荷物に殺虫剤をかけるわけにはいきませんが、段ボールの底面や四隅に卵がついていないか目視で確認し、少しでも怪しいものは新居に持ち込まない決断が必要です」。また、田中氏は意外な侵入ルートとして、新築祝いで贈られる「観葉植物」を挙げました。「鉢植えの土の中や、鉢の底の隙間はゴキブリの幼虫にとって格好の隠れ家です。お祝いでもらった木をリビングに置いてから数日後に現れた、という相談は驚くほど多いのです」。プロの視点では、新築住宅はまだ生態系が安定していない「空白の地」であり、最初にどの生物が入り込むかによってその後の環境が決まると言います。「入居してすぐに毒餌剤を撒くことに抵抗を感じる方もいますが、最初に定着を許さないことが肝心です。一度巣を作られてしまうと、新築であっても駆除は困難を極めます。マイホームを守るためには、最初の半年間、過剰なまでの警戒心を持って対策に臨むことが、その後の十数年の平和を約束します」と締めくくりました。プロが語る教訓は、新築という言葉の響きに惑わされず、冷徹なまでに防除を徹底することの重要性を物語っています。