夏の夜、安眠を妨げる、あの忌まわしい羽音。あるいは、野山を歩いた後、足首に残された、猛烈なかゆみを伴う赤い発疹。私たちの身の回りには、人間の血を求めて活動する、多種多様な「血を吸う虫」が存在します。彼らは、単に不快なかゆみを残すだけでなく、時には深刻な感染症を媒介する、恐るべき存在でもあります。この吸血鬼たちの正体と、その目的を知ることは、私たちの健康を守るための第一歩です。血を吸う虫、すなわち吸血性の節足動物は、その生態によって、いくつかのグループに大別できます。まず、最も身近な存在が、蚊やアブ、ブユといった「飛翔性の吸血昆虫」です。彼らは、産卵に必要な栄養を得るために、主にメスが、動物の血を求めて飛び回ります。次に、私たちの生活空間に静かに潜み、夜間に活動するのが、「潜伏性の吸-血昆虫」です。その代表格が、近年、都市部で再び被害が拡大している「トコジラミ(南京虫)」です。彼らは、ベッドの隙間や、家具の裏に潜み、私たちが眠っている間に、肌の露出部を刺して血を吸います。そして、私たちの体や、ペットの体に直接寄生するのが、「寄生性の吸血生物」です。野山に生息し、草むらから乗り移ってくる「マダニ」や、ペットを介して家庭内に持ち込まれる「ノミ」などが、これにあたります。これらの虫は、それぞれに活動時期も、生息場所も、そして、もたらす被害の深刻度も異なります。彼らは皆、自らの子孫を残すという、生命としての本能に従って、私たちの血を求めているに過ぎません。しかし、その行為が、私たち人間にとっては、耐え難い苦痛と、深刻な健康リスクをもたらすのです。