都市部においてハトの巣が建物に及ぼす影響は、単なる美観の損なわれという問題に留まらず、建物の資産価値や構造的な健全性にまで関わる深刻な事案として捉える必要があります。ハトは一度安全だと判断した場所に強い執着を持ち、同じ場所に何度も巣を作ろうとする習性があるため、初期の段階で適切な処置を施さなければ被害は加速度的に拡大していきます。ハトの巣が作られる主な場所はベランダの室外機の裏や雨樋の隙間、あるいはマンションの非常階段の踊り場など、人目が届きにくく天敵からの攻撃を避けやすい閉鎖的な空間です。これらの場所に巣が作られると、まず直面するのが大量の糞による汚染問題です。ハトの糞は強い酸性を持っており、これがコンクリートや鉄筋、外壁の塗装を徐々に腐食させていく原因となります。特にマンションの防水加工が施された床面において、糞が長期間放置されると防水層が劣化し、最悪の場合は階下への漏水を引き起こすことさえあります。また、ハトの巣自体は枯れ枝やビニール紐、羽などが複雑に絡み合ったものであり、これが雨樋や排水口を塞いでしまうことで、集中豪雨の際に水が溢れ出し、建物内部への浸水を招くリスクも否定できません。さらに、巣には大量のダニやノミが繁殖しており、それが換気扇のダクトや窓の隙間を通じて室内に侵入することで、居住者にアレルギー症状や皮膚炎をもたらすという健康被害も報告されています。事例研究として、ある築十五年のオフィスビルでは、非常用の避難はしごの格納箱の中にハトの巣が長年作られ続けていました。糞によって金属製の格納箱は完全に腐食し、いざという時に蓋が開かない状態になっており、消防点検で重大な指摘を受けるまで誰もその事実に気づかなかったという恐ろしいケースもあります。ハトの巣を放置することは、目に見えないところで建物の心臓部を蝕まれているのと同じであり、専門的な知識を持った業者による定期的な清掃と、防鳥ネットや剣山型の忌避具による物理的な遮断が不可欠です。都市の利便性が高まる一方で、こうした野生動物との共生には厳しい管理眼が求められており、建物を守ることは、そこに住む人々や働く人々の安全を守ることに直結しているのです。
都会に潜むハトの巣が建物に与える深刻な被害