近年、海外からの旅行客の増加などにより、日本の都市部を中心に、その被害が再び深刻化しているのが、「トコジラミ(南京虫)」です。彼らは、カメムシの仲間に属する、体長5〜8ミリメートル程度の、平たくて丸い、茶褐色の吸血昆虫です。その名の通り、ベッドや布団、ソファといった、人々が眠る場所の周辺に潜むことを得意とします。トコジラミの最も恐ろしい点は、その巧みな「隠密行動」と、一度繁殖を許すと根絶が極めて困難になる、驚異的な「生命力」にあります。彼らは、昼間は、ベッドのマットレスの縫い目や、ヘッドボードの裏、壁紙の剥がれた隙間、あるいは、コンセントプレートの内部といった、光の当たらない、ごくわずかな隙間に、集団で潜んでいます。そして、夜、私たちが眠りにつき、体から発せられる二酸化炭素や熱を感知すると、その隠れ家から這い出してきて、肌が露出している、腕や足、首筋などを刺して、血を吸うのです。刺された瞬間には、ほとんど痛みやかゆみを感じません。しかし、翌朝になると、刺された箇所が、猛烈なかゆみを伴う赤い発疹となって現れます。その発疹は、一箇所だけでなく、皮膚の露出部に沿って、複数箇所が一直線に並んだり、集まったりするのが特徴です。この耐え難いかゆみは、一週間以上も続くことがあります。トコジラミは、飢餓に非常に強く、吸血しなくても、数ヶ月以上生き延びることができます。また、市販の殺虫剤の多くに、抵抗性を持つ「スーパートコジラミ」も出現しており、個人での完全な駆除は、ほぼ不可能とされています。もし、あなたの家で、原因不明の虫刺されが続き、ベッド周りに、血糞(けっぷん)と呼ばれる、黒いインクのシミのような痕跡を見つけたら、それはトコジラミの被害を強く疑うべきサインです。その場合は、もはや躊躇している暇はありません。すぐに、トコジラミ駆除の専門知識を持つ、プロの駆除業者に相談することが、悪夢から解放されるための、唯一の道筋です。