高原でのキャンプや、渓流釣りといった、水辺のアウトドア活動の際に、特に注意が必要なのが、「ブユ(ブヨ、ブト)」と呼ばれる、小さな吸血昆虫です。体長は2〜5ミリメートル程度で、黒っぽく、蚊よりも少しハエに似た、丸っこい体型をしています。彼らは、蚊のように、細い口吻を皮膚に突き刺すのではありません。ノコギリのような鋭い口で、皮膚を「咬み切り」、そこから滲み出てくる血を舐め取るという、非常に厄介な吸血方法をとります。そのため、刺された(咬まれた)瞬間には、チクッとした痛みを感じることがあり、傷口からわずかに出血することも少なくありません。しかし、ブユの本当の恐ろしさは、その後にやってきます。ブユの唾液には、蚊よりもはるかに強力な毒素が含まれており、これが激しいアレルギー反応を引き起こすのです。咬まれてから、半日〜翌日になると、患部はパンパンに赤く腫れ上がり、耐え難いほどの、猛烈なかゆみに襲われます。そのかゆみは、数週間続くこともあり、あまりの痒さに夜も眠れない、という人も少なくありません。そして、症状が強い場合は、患部の中心に、水ぶくれ(水疱)ができたり、硬いしこりになったりします。この水ぶくれを掻き壊してしまうと、細菌による二次感染を起こし、さらに症状が悪化する「とびひ」の状態になることもあります。ブユの対策は、蚊と同様に、まず肌の露出を避けることが基本です。彼らは、低い場所を飛ぶことが多いため、特に足元を狙われやすいです。厚手の靴下や、長ズボンを着用し、裾を靴下の中に入れるなどの工夫が有効です。虫除けスプレーも効果がありますが、一般的な蚊用のものよりも、ブユにも効果があることを明記した、より強力なタイプを選ぶと良いでしょう。もし刺されてしまった場合は、すぐに傷口から毒を絞り出し、流水でよく洗い流し、ステロイド成分を含む強力な軟膏を塗布します。そして、何よりも「絶対に掻かない」という強い意志が、症状の悪化を防ぐための、最大の鍵となります。