賃貸物件のベランダにできた蜂の巣。それがまだ小さく、アシナガバチのものであれば、「自分で駆除した方が早いし、安上がりだ」と考えてしまうかもしれません。しかし、賃貸物件において、入居者が自己判断で蜂の巣を駆除する行為は、たとえ成功したとしても、様々なリスクとトラブルを招く、絶対に避けるべき危険な選択です。その理由は、大きく分けて三つあります。第一に、何よりも「身の安全」に関わる問題です。蜂の巣の駆除は、たとえ相手がアシナガバチであっても、常に刺される危険と隣り合わせです。もし駆除に失敗し、多数の蜂に襲われてアナフィラキシーショックなどの重篤な症状に陥った場合、その責任は全て自分自身で負うことになります。また、パニックになってベランダから転落するなどの二次的な事故の危険性も考えられます。第二に、「建物への損害」という問題です。駆除のために使用した強力な殺虫剤の薬剤が、建物の外壁や塗装、サッシなどを変色させたり、シミを作ってしまったりする可能性があります。また、巣を落とす際に、壁や窓ガラス、エアコンの室外機などを傷つけてしまうことも考えられます。このような建物への損害は、入居者の過失と見なされ、原状回復のための高額な修繕費用を請求される可能性があります。第三に、「近隣住民とのトラブル」に発展するリスクです。駆除作業中に興奮した蜂が、お隣や下の階のベランダに飛んでいき、そこにいた住人を刺してしまうという、最悪のシナリオも十分に考えられます。もし、そのような事態になれば、損害賠償を求められるなど、深刻なご近所トラブルに発展することは避けられません。これらのリスクを考えれば、賃貸物件における蜂の巣の駆除は、個人の判断で行うべきではないことが明らかです。安全の確保、建物の保全、そして近隣との良好な関係を維持するためにも、蜂の巣を発見したら、必ず管理会社や大家さんに連絡し、プロの手に委ねるのが、唯一の正しい選択なのです。自分の手柄を立てようという気持ちは、百害あって一利なしと心得ましょう。
自分で駆除は絶対ダメ!賃貸での蜂の巣