近年、日本の港湾地域などで発見が相次ぎ、大きなニュースとなっている、南米原産の特定外来生物「ヒアリ」。その非常に強い毒性と攻撃性から、最も警戒すべき蟻の一つとされています。ヒアリの巣は、在来種の蟻の巣とよく似ているため、見分けるのが難しい場合がありますが、その危険性を考えれば、特徴的なサインを知っておくことは、私たちの安全を守る上で極めて重要です。ヒアリの巣の最も顕著な特徴は、その形状です。彼らは、土を盛り上げて、はっきりとしたドーム状の「蟻塚(ありづか)」を作ります。その高さは、成熟した巣では二十センチから、時には五十センチ以上にも達することがあり、表面は粘土を固めたように滑らかで、出入り口となる穴がはっきりと見えないことが多いのも特徴です。日本の在来種であるクロヤマアリなども、巣の入り口に土を盛り上げることがありますが、ヒアリの蟻塚ほど大きく、整ったドーム状になることは稀です。この「こんもりと盛り上がった、赤茶色の土の山」は、ヒアリの巣を疑うべき、最も分かりやすいサインと言えるでしょう。また、巣が作られる場所にも特徴があります。ヒアリは、日当たりの良い、開けた場所を好む傾向があります。公園の芝生や、牧草地、畑のあぜ道、道路脇の緑地帯、そして港のコンテナヤードの周辺など、人間が活動するエリアのすぐそばに巣を作ることが多いのです。そして、何よりも危険なのが、その巣を刺激した時の反応です。在来種の蟻の多くは、巣を刺激すると、慌てて巣の中に逃げ込んだり、四方八方に散らばったりします。しかし、ヒアリは全く逆の反応を示します。巣に少しでも振動や衝撃が加わると、巣の中からおびただしい数の働き蟻が一斉に這い出してきて、非常に攻撃的になり、侵入者に対して集団で襲いかかってきます。この「爆発的な攻撃性」こそが、ヒアリの最も恐ろしい特徴です。もし、あなたが公園や空き地で、赤茶色でドーム状の不審な蟻塚を見つけたら、絶対に興味本位で近づいたり、棒でつついたりしてはいけません。それは、極めて危険なヒアリの巣である可能性があります。すぐにその場を離れ、決して素手で触らず、お住まいの自治体の環境課や、環境省の地方環境事務所に連絡し、専門家の判断を仰いでください。