特定の季節になると、なぜか咳や鼻水が止まらなくなる。風邪でもないし、花粉症の時期とも少し違う。もし、あなたの家の周りで、夕暮れ時に虫の柱「蚊柱」がよく見られるなら、その症状の原因は、もしかしたら「赤虫」の親である「ユスリカ」かもしれません。「ユスリカ喘息」と呼ばれるこのアレルギー疾患は、意外と知られていない、しかし決して珍しくはない健康問題です。アレルギーが起こるメカニズムは、花粉症やハウスダストのアレルギーとよく似ています。ユスリカが大量に発生し、その数日の短い寿命を終えると、おびただしい数の死骸が地面やベランダ、窓のサッシなどに残ります。この死骸が、風に吹かれたり、人の動きによって乾燥・粉砕されたりすると、目に見えないほど細かい粒子となって空気中に舞い上がります。このアレルゲン物質(アレルギーの原因となる物質)を含んだ微粒子を、呼吸と共に吸い込んでしまうことで、体の免疫システムが過剰に反応し、アレルギー症状を引き起こすのです。主な症状は、気管支喘息に似た、しつこい咳や、息をするとゼーゼー、ヒューヒューという音(喘鳴)がすることです。また、アレルギー性鼻炎として、くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどが現れることもあります。ユスリカアレルギーの特徴は、原因となるユスリカが大量発生する、春から初夏、そして秋口にかけて症状が出やすいという点です。原因不明の呼吸器症状が、毎年決まった時期に繰り返される場合は、このユスリカ喘息を疑ってみる価値があります。対策の基本は、アレルゲンであるユスリカの死骸を、体内に取り込まないようにすることです。網戸を目の細かいものに替えたり、隙間をなくしたりして、成虫の室内への侵入を徹底的に防ぎます。そして、室内に侵入してしまった死骸は、こまめに掃除機で吸い取るか、濡れた雑巾で拭き取ることが重要です。空気清浄機の使用も、室内のアレルゲン除去に効果的です。赤虫の親が、思わぬ健康被害の原因になる。この事実を知っておくことは、自分や家族の健康を守る上で非常に大切です。
その咳、赤虫が原因かも?知っておきたい「ユスリカ喘息」