ミツバチの巣が、軒下や庭木といった目に見える場所ではなく、家の壁の中や天井裏、床下といった、建物の構造内部に作られてしまった。これは、ミツバチ被害の中でも最も厄介で、深刻なケースです。発見が遅れがちで、気づいた時には、取り返しのつかない事態に陥っている可能性もあります。壁の中の巣を放置することには、様々な危険性が伴います。まず、巣そのものが巨大化し続けることです。閉鎖的で安全な空間は、ミツバチにとって理想的な環境です。巣は年々大きくなり、働き蜂の数は数万匹にまで膨れ上がります。そうなると、壁の隙間などから室内にハチが侵入してくるリスクも高まります。しかし、本当に恐ろしいのは、巣に貯蔵された大量の「蜂蜜」です。巣から溢れ出た蜂蜜は、壁の内部の断熱材や木材に染み込み、そこから様々な二次被害を引き起こします。まず、糖分である蜂蜜は、カビや菌類にとって最高の栄養源です。湿気を帯びた壁の内部でカビが繁殖し、家の構造材を腐食させたり、アレルギーの原因となるカビ胞子を室内に放出したりする原因となります。また、蜂蜜の甘い匂いは、アリやゴキブリ、ダニといった、他の害虫を呼び寄せる強力な誘引剤となります。ミツバチを駆除したと思ったら、今度は別の害虫の大発生に悩まされる、という悪循環に陥るのです。さらに、巣が放棄された後も問題は残ります。残された巣や蜂蜜、死骸が腐敗し、強烈な悪臭の原因となることもあります。このような壁の内部の巣の駆除は、素人では絶対に不可能です。多くの場合、壁や天井の一部を解体して巣を物理的に取り出すという、大掛かりな工事が必要となります。駆除作業も、狭く暗い空間での作業となるため、非常に高い専門技術と経験が求められます。もし、家の壁から常にハチの羽音が聞こえたり、特定の場所の壁がほんのり温かかったり、甘い匂いがしたりするなどの異変に気づいたら、それは壁の中に巣があるサインかもしれません。一刻も早く、経験豊富な専門の駆除業者に相談し、被害が拡大する前に対処することが、家と家族の安全を守るために不可欠です。